(ねえお父さん。わたしのやりたいことは、無茶苦茶なのかな)


「セシア……」

 胸元で手を握ったまま、凛華がセシアに話しかける。
 やりたいことは決めた。
 ジルハから得られる情報はこれが全てだ。
 つまり彼はもう用済み。
 確かに彼はアルフィーユの兵士たちを何人も殺してきたかもしれない。彼がいなければ悲しい思いをせずに済んだ家族はたくさんいたかもしれない。
「なに?」
 セシアはきっと凛華の言いたいことを分かっているのだ。
 けれど何も言わない。彼女に言う自由を与える。

(お父さん。でもわたし、間違ってるとは思わないよ)
 すうっと息を吸い、凛華は口を開いた。


「ジェイドを……殺すの?」


 声は震えていた。
 先ほど高らかに戦争を止めさせると宣言した彼女らしくもなく、手が震えている。
 母親も父親も祖父も亡くした彼女は、これ以上自分の知っている人が死んでいくのを見たくはなかった。
「……そうだと言ったら?」
 彼の声は冷たかった。
 目の前にいるのはセシア個人ではない。何万人もの国民を守るためにいる国王なのだ。
 そんなことは分かっている。
 凛華だって、もしジルハが殺したのがアルフィーユの人ではなく自分の父親だとしたら彼に生きていて欲しくないと思うだろう。
 それでも。
「納得できない」
 はっきりとその王の目を見て言った。
 ジルハは今現在生きている。
 妙な動きをしようものならロシオルが斬りつけるだろうが、それでも彼は生きているのだ。
 死んで欲しくなど、ない。

「わたしは、ジェイドを殺すのには反対だよ」


 だんだんと冷えていく感触をまだこの手が覚えている。
 開かれない目。名前を呼んでくれない唇。頭を撫でてくれない手。
 あんなものをもう二度と、体験したくはなかった。


「リンカ」

 ロシオルが彼女の言葉を止めるように名前を呼ぶ。
 凛華は「預言された少女」としてこの国に受け入れられているが、それは平和の象徴としての彼女であって、セシアの行う統治に干渉するようなものではない。
 そもそも、国王に意見することができるのは、大臣たちくらいなのだ。
 けれど凛華は黙らなかった。

「絶対に、反対だから」

 黒曜石のような瞳。
 そんなものでは、ない。彼女の瞳は宝石のように澄んでいて奥が深いが、無機質な宝石とは違って意志の力と言えば良いのだろうか、強い煌めきがあるのだ。
 誰もが、彼女に惹かれる原因。

「……まだ何も言ってないんだけどね」

 セシアがくだけた口調で言い、笑みを漏らす。
 自分を睨み付けていた凛華の頭をぽんと軽く叩いてから表情を消した。
「ジルハ・グラグノール」
「……はい」
「生きたいか?」
「……命は惜しいです」
 ルビーに似た色の瞳がセシアの青い瞳を捉える。
 凛華は、目を瞑った。


「──リンカ」
「え、……なあに?」

 急に話が自分に向けられ、少し慌てる。目を開けて凛華はセシアの方を向いた。
「星見の塔にいる騎士は全部で何人?」
「騎士……? あ、えーっと……ロイア君とか、見回りをしてくれる人たちはいるけど……あそこに住んでるのは、わたしとベルとリーサーさんだけ。だから住んでる騎士はいないよ。それがどうかしたの?」
 だから夜は部屋から出るなとベルたちに厳しく言われている。凛華はよく分かっていないが、それでも彼女は二つの大国の命運を握っているかもしれない少女なのだ。
 それ故に狙われやすい。
 それならば何故セシアの私室の近くに彼女の部屋を造らなかったのかとベルは疑問に思っていたが、それにもきちんと理由はあった。国王の守りは堅い。けれど最も狙われるのはその国王なのだ。彼の近くにいれば凛華にも危険は及ぶだろう。それが、彼女の部屋が国王の私室から離れている理由。

「常駐の騎士がいたら良いと思わない?」
「え?」

(……あ)
 意味が、分かった。彼の言おうとしている意味が。
 凛華がぱっと表情を明るくする。そして、にっこりと笑った。
「うんっ!」
 彼女の笑顔を見てにこりと一度微笑んでから、彼は再びジルハに向き直った。
 膝をついている彼に処分を言い渡す。

「では────」




 自分の寝台でころころと転がっていた凛華が動くのをやめ、食事の用意をしていたベルに笑いかける。
「ねえベル、良かったねっ! これで安心して眠れるよ」
「ええ、そうですわね」
 最近は大広間では食事をとらない。
 こうやって無駄に広いこの部屋で、ベルとリーサーと一緒に食べるのだ。
 そして今日はもう一人別の人物がいた。

「……気合いいれます」

 神妙に頭を下げたのはジルハだ。
 その言い方に、凛華は笑った。
「ジェイドなら大丈夫だよ。わたしはともかく、ベルとリーサーさんよろしくね」
 剣はあるし、と彼女は言う。それではジルハがいる意味がないのだけれど。彼は凛華を守るためにここに配属されたのだけれど。
 まあいいかと彼は表情を崩した。

 首を落とされ、見せしめにされるかもしれなかった。
 あの王がそう言えば自分はあの場で死んでいたのだ。
 けれどこの少女とあの国王は、それをしなかった。
 この塔の常駐の騎士として凛華に仕えることになったのだ。

 何人か反対する者もいたが、そこは凛華が押し通した。「でもわたしだって剣使えますよ」と、笑顔で言ってのけたのである。
 結局はジルハに危険がないことを証明するために、何日かはロシオルも塔に滞在することになってしまった。

「ねえロシオルもそんな端っこにいないでご飯食べようよー」
「……ああ」
 生真面目な騎士は現在のこの状況が気にくわないようである。
 だが妹の微笑にも弟子の呼びかけにも勝てそうにない。はあと一つため息をつき、壁につけていた背を離した。塔の住人は三人から五人に増えたのである。ただし少し後には四人に戻るが。

「はいリンカ、温かい内にお召し上がり下さいね」
「そうそう。愛情こもったスープだからね。……まあわたしのじゃなくて調理場総監督の、だけど」
 リーサーがテーブルに料理を並べていくのをベルも手伝いながら、にこりと笑った。
「ありがとう」
 嬉しそうに目を細め、凛華は笑った。
 大広間で少し緊張しながら食べるよりも、こうやってアットホームな雰囲気で食べる方が凛華は好きだ。
 凛華の笑顔を見たリーサーは一瞬手の動きを止め、それから笑い返した。ベルも主の笑顔が嬉しく、いつもより満足げである。ロシオルは相変わらずの堅い顔だったが、それでも凛華の笑顔を見ると和むようで雰囲気が柔らかくなっているし、今日凛華に会ったばかりのジルハも既に彼女の良さを分かっていた。
 凛華というこの少女は何故だか惹かれてしまう。改めてそれを実感した一日だった。




 凛華がアルフィーユに来て既に三ヶ月が経った。
 アルフィーユは春に別れを告げ夏を迎えた。
 ジェナムスティほどではないが、この世界でアルフィーユは北方に位置するので夏でも過ごしやすい。湿気が少ないのも原因の一つだ。日本での気だるい夏が苦手だった彼女はこの天候が気に入った。

 来た時はかなり慌ただしい毎日を過ごしていたが、この頃には凛華の生活のリズムも安定してくる。
 朝起きて、ベルとリーサーとジルハと朝食。
 午前中はダンスと竪琴を教えてもらう。やはり凛華にはベルの言葉が異国語に聞こえて堪らない。昼食後はシエルと剣を交わす。時折、ロシオルとの稽古。
 夕食もやはり一人で食べるのは寂しいからと必ず誰かと一緒に食べていた。
 その後はお風呂に入って、それから勉強。セシアに教えてもらえる日もあった。
 始めの内は平気だったのだが疲労は重なり、凛華は毎日起きるたびにそのままもう一度眠りそうになるという状態を繰り返す。けれどジルハにあれだけ言った手前、と思い凛華はだるい体を無理矢理起こしていた。


 一番最初に彼女の顔色の悪さに気付いたのはベルだった。
 ほぼ毎日一緒にいるのだからささいな変化にも気付くのだ。
「リンカ。……無理をなさってませんか? お顔色が優れませんが……」
 凛華は何かを振り切るように首を振り、真っ直ぐにベルを見つめて言った。
「大丈夫」
「無理はなさらないで下さいね?」
「大丈夫だよ」
 リーサーもセシアもロシオルもジルハも、それどころか第二騎士隊の騎士たちも凛華に声を掛けたが、彼女は大丈夫だと笑うだけだった。


 周りの人を心配させるわけにはいかなかった。
 凛華は戦争を止めるためだけに存在していて。
 存在価値は今のところたったそれだけで。もしもそんな力がないのだと分かってしまったら。
 存在価値が、なくなってしまう。
 王城の人々の態度はどう変わってしまうのだろう。役立たずと疎まれるのだろうか。結局は何も出来ないではないかと呆れられるのだろうか。

 考えたくない。想像したくもない。
 もうこれ以上、誰かに必要とされないのは嫌なのだ。
 置いていかれるのも嫌だ。だから、ずっと頑張らないと。

 ずっと? 「ずっと」って、いつまで?


(わたしはいつまで頑張り続けたら……いいんだろう……)




「──カ。リンカ、リーンカ」

 セシアの低めの声が彼の部屋に静かに響く。
 話し掛けられている本人はただいま熟睡中。
 机に頬杖をついてすーすーと寝息をたてているのは、勿論凛華だ。
 普段彼女は他人がいる場で寝ることはない。正しく言えば寝ることができないのだ。それなのに今はこうやって熟睡してしまっていた。重なった疲労というものは強敵だ。
 ちなみに彼女の手にはまだペンが握られたままである。

「……随分と器用なんだな」

 いや、あなた。気にすべきはそこではないでしょう。

「……全く。どこが大丈夫なんだか」
 セシアは軽くため息をついて、凛華の手からペンを取って机に置き、机の上に広げられていたものをきちんと片付けた。最近は凛華は自分の持ち物を持って来ていない。いつもセシアの見慣れないシャープペンシルなどの入った筆箱を持参してきていたのだが、セシアが仕事に使っている筆記具は私室にもあるので、それを貸してやることにしている。
 一通り勉強道具を片付けた後でセシアは自分の襟元に手を伸ばし、外套を留めていた留め具を外した。
 すうすうと眠り込んでいる彼女にそれをかけてやり、それから彼女を抱え上げる。
 彼女は膝丈のスカートだったのでそのまま腕を膝の下に通すと素肌に触れることになる。礼儀正しいセシアは、それをためらったのだった。
 細身の彼女は随分と軽い。
 幼い頃から武術も何もかも教えこまれていたセシアは腕力がある。けれど、それでもここまで軽く感じるものだろうか?

「ぅん……、お父さ……」

 腕の中の凛華が手を伸ばし、セシアの服に触れた。
 それから服をきゅっと掴み、安心したように額をセシアの肩に預ける。
 どうやら暖を取っているらしい。

(……俺、リンカの父親?)
 内心で彼女の言動に苦笑しながら、セシアはあることに気付いた。
 この少女の両親はどうしているのだろう。
 セシアの父親である先王は、三年前のジェナムスティとの戦いの後、第二妃であるイディアス王妃と共に二人とも同じはやり病で亡くなっている。実の母親は、十年以上前に既に亡くなっていた。だから彼にも義妹にも、両親はいない。
 その後、セシアは十六歳にしてアルフィーユの王として即位した。
 色々問題もあったのだが周りには彼を助ける人がたくさんいたし、何より、もし王がいないままでジェナムスティからの攻撃を受け、統率を取れなかったら敗因になりかねない。
 そう落ち込んでもいられなかった。
 両親のことをずっと考えないようにしていたけれど。
 彼女は?
 こんな、見ず知らずの国にきて預言された少女だとか言われて、辛くないのだろうか。
 彼女はアルフィーユに来てから、両親や親類や友達について何も話していない。
 そう言えばセシアは彼女の好きなものも苦手なものも知らなかった。
 保護する身でありながら何も知らないとは。

(いつか……そのことを聞けるようになったら、リンカはあの笑顔で笑ってくれるだろうか)


 とにかく彼女を寝かせてやることがまずは大事だ。
 広いこの部屋は少し寒い。彼女の部屋まで運ぼうかと思ったが、やめた。
 何故だろう。部屋まで運んでやれば良いのに。
 見ていたいと、思ってしまった。


 別の扉を開け、自分の寝台へと向かう。
 毎日敷布も掛布も念入りに洗濯されて取り替えられているので特に問題はないだろう。
 彼女を寝台に降ろし、柔らかな羽の布団をかけてやってから、いざそこを離れようとする。
 けれど、くんっと何か引っ張られるような抵抗に、セシアは立ち止まってしまった。
「……え?」
 振り返ってみると、凛華の手が自分の服を掴んでいた。
 しかもしっかりと握っていて離そうとしない。無理に引き剥がすと起きてしまいそうである。
 起こして塔まで見送ってやるという選択肢は無視した。ここまでぐっすりと眠り込んでいる彼女を起こすのはためらわれる。
 セシアは困った表情を浮かべ、寝台の脇に椅子を寄せ、腰を下ろした。
 眠っている彼女はぴくりともしない。
 それ程に疲れが溜まっていたのだろう。
 どこか無防備なあどけない寝顔。納得できないと自分を睨み付けてきた時の表情とは似ても似つかない。

 セシアはそっと手を伸ばし、彼女の黒髪に触れる。
 触り心地の良い綺麗な髪だ。
 手にとった髪を指で梳き、それから離した。

「寝顔は、平和なんだけどな……」

 起きているといつも何かを抑え込んでいるような感じがするのは自分の気のせいなのだろうか。
「調子狂う……」
 ぽつりとそう呟いた。
 そうだ、彼女といるとこちらが保とうとしている調子がいともあっさりと狂う。
 冷淡な王で居続けることができない。
 どうしても惹かれてしまう。

 笑って欲しいと、この少女に関心を持ってしまう。

 こんなことは初めてだった。
 しばらくそうやって彼女の寝顔を見つめていると、さすがに連日の仕事漬けの疲れが出てきて眠くなったのか、セシアも寝台の隅に頭を乗せて規則正しい寝息を立てはじめた。


「…………傍に……て……」


 ――いかないで。






 夜明けも大分過ぎた頃。
 いつもこの国の国王はとっくに起き出している時間である。けれどその国王が見あたらない。
「セシア? 入りますよ?」
 側近兼お目付役であるアイルはそう断ってからセシアの寝室に入った。
 一国の王の寝室に侍従ではない臣下が入ることなど考えられないのだが、セシアとは長年来のつき合いで彼はアイルに絶大な信用を寄せている。だから、アイルはそっと寝室に入ったのだ。
「おや」
 少し部屋の奥まで進み、アイルが少し驚いた表情になる。
 可愛らしい寝顔をセシアに向けて眠っている凛華。その傍らで規則正しい寝息を立て、窓から差し込む朝日に銀髪を光らせているセシア。
 まるで高名な絵師が描いた絵画であるかのような二人の姿にアイルは微笑んだ。
 あのアイルが。「顔の筋肉がないのでは」とまで陰で言われているアイルが、微笑んだのだ。
「これはスキャンダルですかね」
 ふっと笑みを浮かべたアイルは無表情に戻すと、すぅっと息を吸った。

「朝ですよーー」

 大きな声。
 びくりとセシアが目を開けた。相当驚いたらしい。
 だが凛華は起きてこない。多少服から指が離れそうだったが、それでもセシアの服を掴んだままだ。
 眠そうに青い瞳を擦りながらセシアがアイルを見る。
「朝か……」
「おはようございます、セシア。三十分遅いですよ」
「すまない、すぐ行く」
「承知いたしました。では……」
 未だに眠気から抜け出せないセシアに、アイルが優雅に一礼して部屋を出ていった。凛華がいることについては全く触れようとはしなかった。

「……さてと」

 自分の服を握ったまま可愛らしい寝顔を自分に向けて、まだ眠りから覚めない凛華を見てセシアはどうしたものかと悩んだ。
 丁度その時パタパタと廊下を駆ける音が室内にも届いた。
「陛下! リンカをご存じありませんでしょうか!? お部屋にいらっしゃらないんです……っ! 寝台も使われた様子がないですし……!!」
 扉の向こう側から聞こえてきたのは凛華の侍女であるベルの声だった。アイルと同じく、起きてこなかったのを不思議に思ったのだろう。
「ああ、ベルか……。入ってきてくれないか?」
 「し、失礼いたします」と言って慌てた様子のベルが入って来た。
 一つ部屋を抜け、寝室の扉をそっと開ける。彼女を見たセシアは、人差し指を唇に当て困ったような笑顔で眠ったままの凛華を指差した。

「あ……こちらでしたか……」
 ベルが心底ほっとした顔を見せた。
「……全く起きないんだ。だから起きるまで起こさないであげてくれないか? わたしは仕事があるから見ていてあげて欲しい」
「は、はい」
 凛華を起こさないように二人とも小さな声で話す。
 セシアは出来る限りそっと自分の服を彼女の手から外すと、ベルに「後は頼む」と言って部屋を出ていった。服は執務室に行ってからでも着替えられる。


 凛華が起きたのはそれから三十分程経ってからだった。
 ぐっすりと──セシアの寝台を占領して──寝たので、大分体が楽になっていた。気怠さは少しも残っていない。
 起きたらセシアの部屋で、近くでベルが微笑んでいたのには凛華はかなり驚いたが。
「あれ? これの答えって二分の一?」
 などと、素晴らしいボケまでかましたそうだ。
 どうやら彼女は眠っている間でさえも寝る前にやっていた数学の問題を考えていたらしい。ご苦労なことだ。





「……っ!」


 薄暗い闇の中、勢いよく跳ね起きて。
 額と首筋に張り付く不快な金髪を払いのけて大きく肩で息をする。

 「見えて」しまった。

 広がる血と。
 声を失った少女と。


「……ロザリー」
 寝室の扉が開けられ、声をかけられる。アイルだ。
 彼女が度々このような予見をしてしまうことを勿論知っていたし、時にはそれに助けられたりしていた。けれど今回のような態度を見せたことはなくて。
「アイル……っ!」
 長身の夫に抱きつくと、アイルはロザリーを落ち着かせるように背を撫でた。
「……『何』を見た?」

「リンカちゃんが……っ!」

 凛華という名前を聞いてアイルがぴくりと反応した。
 彼女はこの国にとって大切過ぎる存在で、その彼女に関する予見をロザリーがして。それが、ロザリーがこんなにも怯えるような、そんなものなら。
「落ち着いて。最初から見た内容を話せ。……嫌な夢は話すと楽になるから」

 肩が震えるのをやっと止めることができたロザリーは、ぎゅっと拳を握り、掠れたを絞り出す。

「アイル、助けて……っ! リンカちゃんが危ないの……っ」